ALS嘱託殺人事件
悲劇を繰り返さない為に
死ぬことが出来ない状態に追い詰められること、この問題は殺人事件以上に残酷で猟奇的な問題です。
安楽死制度を認めることは、患者の死ぬ権利を明確化するだけでなく、患者の抱える問題が、本当に安楽死以外に解決不能な問題であるのか、不適切な医療が行われていなかったのかを明確にする狙いがあります。
令和元年11月30日は、ALS患者としてSNSで情報発信されていた林優里さんの命日です。
翌年7月23日に事件として報道されると、その反響は大きく、猟奇的な事件として大きな注目を集めました。
報道されるまで、半年以上の間、どのような準備があったのか。なぜ、裁判は始まらないのか。
しかし、この事件の重要な論点は、裁判の中にはありません。
この事件の重要な論点は、犯罪に手を染めず、罪に問われることのない主治医と林優里さんの関係の中にあります。
こちらのページでは、林優里さんのツイッターとアメブロの内容を中心に、キーワードとともに日本の医療の問題点を指摘していきます。
@tangoleo2018 https://ameblo.jp/tango522
社会保障費の申請 生活保護の申請
引越の手続き 17の事業所へのヘルパーの手配
24時間30人規模の介護体制の構築
延命治療、蘇生措置の拒否 転院希望
胃瘻の設置と後悔 胃瘻減量の提案
眼機能低下 安楽死費用の確認
医師への連絡 費用の振込
林優里さんは、蘇生措置をはじめ、人工呼吸器を含む、あらゆる延命措置を拒否していました。
それは、患者同士の交流会に参加した際、自分より重度のALS患者の姿を見て、自分は、そのような姿になりたくないと感じていたからです。
その一方で、生活保護の申請を含めた各種手続き、ヘルパーの手配など、生きるために必要な対応を精力的に行っているように見えます。
彼女にとって、密室に取り残され、一人で悶え苦しみような状況は、最も身近な恐怖でした。
彼女は、そのリスクを回避するため、そして家族への負担を減らすために、ご自身で必要な手配を精力的に行っていました。
彼女は、ALS患者になってから、安楽死制度の必要性を訴えるようになっていました。できるだけ楽に最後を迎えたいという思いと、彼女の行動には、まったく矛盾がありません。
彼女は、父親には死にたいという願望を打ち明けることが出来なかった一方で、主治医には自分の願望を正確に伝えていた痕跡があります。
その後、胃瘻を徐々に減量する方法により、楽に最後を迎えようとする林優里さんの提案を主治医は拒否します。
ここでも、彼女の楽に最後を迎えたいという思い、行動は一貫しており、まったく矛盾がありません。一方で彼女の思いに理解を示しながら、のらりくらりとかわして延命治療を続けようとする主治医の行動も一貫しているように見えます。
事件発生時、彼女はTLS(完全閉じ込め状態)になる寸前でした。TLSになると、決まった時間に寝返りを行うなど、作業がルーティーン化し、介護者の負担は急に軽くなると言われています。
日本でのALS患者数は年々増加し、現在では1万人程度、そのうち1割程度がTLSになると言われています。国内にTLS患者が1000人程度いるとすると、彼らはどのようにTLSになっていったのでしょうか。